Be a doctor!

都内在住在学の医学生(2年)。医学生の日々の様子を徒然と綴っていきます。

愛媛を旅して 後半

Day2

 8時に起床。準備を整えて840くらいに出発。ガソリンが不安だということで,久米というところにあるシェルで給油してからドライブへ。朝が本当に綺麗。早起きしてよかったと思えるような朝の景色が目前に広がっていた。気持ちの良い朝は本当に久しぶりな気がした。

 松山と東温の間あたりにある久米という街まで行って給油。でいざしまなみ海道を目指してドライブを開始。当初の予定では高速道路をある程度使うことを想定していたが,久米まで出てしまったことにより山道ドライブに変わってしまった。松山と今治を結ぶ半島のことを高縄半島という。そんな高縄半島をショートカットする山道,国道317号線をひたすら北東に向かって進む。小一時間の山道ドライブでした。山の中ということもあって,さすがにさむい。外気温は2度とか。久しぶりに突き刺さるような寒さを感じた。冬が来た。温かい格好をしてきてよかったと思う。

 山道が終わると今治の町のはずれにやってきた。街がある,信号があることがわけもなくうれしい。いつの間にかしまなみ海道へ突入。正式名称を西瀬戸自動車道という。西瀬戸自動車道の端っこだったようで,本当にいつの間にか,しまなみ海道に突入していた。

 走ること数分,来島海峡大橋が見えてきた。昨年バスで通ったときに誓った,ドライブして渡るという決心。ついにそんな夢が叶おうとしていることに気づく間も無く,ただひたすらに美しい瀬戸内のしまなみを眺めていた。来島海峡大橋という人工物の造形美と,そこから見下ろす島々の数々。何度きても本当に良いところです。

 大島南インターでしまなみ海道を降りる。そしてここからも10分ほど山道を登る。春に訪れた対馬の展望台にもどことなく似ている。そして亀老山展望台に到着。日本の展望スポットランキングで2位に入るというから期待してかかっていたが,期待以上の景色を楽しませてくれた。もちろん来島海峡大橋を一望できるというのもそうだし,瀬戸内の島々を遠目に見るのは至福の一言に尽きる。360度の絶景が広がっていた。

 10分ほど景色を楽しんだら,今度は下灘へ向かう。保険どうしようとか揉めつつも,誰でも保険の対象になるというのを信じて来島海峡SAから桜三里までドライブ。60kmくらい。1時間くらいかかったかな。久々の運転で,最初はかなりビビっていた。サイドミラーをうまく使うようになってからはだいぶ慣れた。課題は車線変更。速度は案外一定に保てる。桜三里からは運転を交代して下灘を目指す。伊予インターを降りてからは下道を15kmほど走行。チャリが目立つ。チャリで来ても気持ち良いんだろうなあ。

 海沿いの道が懐かしい。幾度と鉄路で目にした光景が今度は車から見えてくる。瀬戸内のしまなみが遠くに見える。あれが山口なのか,広島なのか,はたまた大分なのか,そんなことを考えるだけで随分と遠くに来た実感が湧いてくるものである。この景色,人生で好きな景色ベストスリーには入りそう。

 とか思っていると,下灘駅の近くへ。左折を忘れたので,しばらく走行してから折り返す。そして狭い道を少々進むと下灘駅が見えてきた。相変わらず人が多いな。にわかめ,とイラつく。駐車場は狭いが運良く空いていた。昨年の反省を忘れて,又しても24mmだけを持ってやってきてしまった。晴れているし,去年と似たようなコンディションで,似たような写真しか撮れない。しかも電車も行ってしまう。調べたところによると,どうやら近くに海へと続く線路というものもあるようだ。また行くしかない。超広角レンズを持って。

 10分くらい写真撮るのを楽しんだら今度は長浜へ。長浜からは青島に行く船に乗る予定。早すぎるから大丈夫でしょう,という希望的観測とともに突き進む。相変わらず海が近い。長浜までは15分あるかないかと行ったところ。予讃線の場合,伊予長浜駅といったところになる。長浜は音もしない静かな田舎町。港がすぐ近くにある。青島行きの船が泊まっているが,満員とかいてある。中にいる人に聞いてみると今日はどうやらダメとのこと。いくら三連休の真ん中とはいえ,こんなわけのわからない航路に乗られないとはどういうことだ。猫島の威力は凄まじい。萎えたーとかいってみるものの,やることがない。でも船には乗りたい,ということで,松山の三津浜を目指すことにする。そこから何でもいいから船に乗ろう。時間の都合の良い船に乗ろう,ということにして来た道を引き返す。

 帰りは窓を開けて海風を感じながらのドライブ。途中でローソンに立ち寄った。ここでもApple Payでと通じたことに少々驚き。なめてはいけない。少し寒いくらいの潮風を体に浴びつつ,海沿いの道を北上する。予讃線で通るよりかなり速い。

 また1時間くらい経ったのだろうか。松山の市街地をはなれ,錆びた港町にやってきた。三津浜港。1430あたりの時間で到着。どうやら次のフェリーは1550発の中島行き。忽那諸島の島の一つを訪れることにした。忽那諸島なんて名前も今日知ったばかり,どこにあるのかもよくわからない。けれど,船に乗って離島へ行く夢は叶えられる。切符売り場の人にどの島に行けばいいか聞いてみる。特に目的地は決めていない。離島に行きたい。どの島がオススメか。野忽那島か睦月島か。聞くところによると,睦月は観光客が行くところ,野忽那は誰も行かないと。睦月に先に着くみたいだし,とりあえずの目的地を睦月島とする。しばし休憩。それにしても今日の行動量は比類なく多い。

 錆びた港を散歩してみたり,絵になる待合室で喋ってみたり,眠ってみたり。休日の昼下がりを満喫していると,1時間という時間はあっという間に過ぎ去る。切符を買い,乗船。高速船以外でいい思い出がないから,神経を尖らせつつ,船に乗り込む。車とかトラックもかなりの台数乗れるよう。乗り込んでびっくり。船が恐ろしく綺麗。田舎の船ってボロボロのものでくるのが掟でしょうが。中島汽船という船なのだが,儲かっているのか。こんなに綺麗な船ならば安心だ。寝転がれるスペース,グループで座れるテーブル席,高速バスのような座席,甲板と4種類くらい席はあるらしい。どの席も魅力的なのだが,一番前からは海の景色を眺められる。というわけでバス席へ。思っていたよりもだいぶ多くの人が乗っている。採算が取れているのかは知らないが,確実に住民の足となっているのだろう。

 座ってうとうとしていると,音もなく出航。こんなにも揺れないものだったのか。瀬戸内海が穏やかなだけかもしれない。座っているだけでは退屈だから,適当なところで甲板に出てみる。潮風と夕日が眩しい。離島という名の最高の夕方に向かっていることに,高揚感を抑えきれない。夕陽と船とそれから離島。

 1時間ほどの乗船で,睦月島へ到着。いよいよ離島へ上陸である。我々一行と何人かを下ろしたらすぐに出発。路線バスのような乗降時間の短さ。少し歩みを進めると,すぐにネコを発見。そうだ,この島は,猫の島だ。この先どんな猫に出会えるだろうか,と期待値を高めつつ,昔ながらの日本の家屋の景色を眺めながら進む。これぞ日本という風景だが,日本の嫌らしいしきたりもまた残っているのだろう,なんてことを考えた気がする。こういうところはガイドブックに載ることもなく,いつまでも静かに時を刻んでいてほしい。まだ陽が沈みきっていない黄昏時のことである。夕陽が沈む瞬間を見たくなる。海沿いの道に出て,太陽の残像が見えた瞬間の空の色を何と形容すれば良いのか。緑がかった部分があったこと,やたらと空が広かったこと,そこを一機の飛行機が過ぎ去っていたこと。感動的な時間だった。しまなみの向こうに,陽が沈むのを見送ると,世界は徐々に夜の顔を見せ始めた。

 道を引き返そうか,という考えもよぎったが,人を招き入れるような道を見つけてしまった。これが悪夢であり,またあどけない冒険の始まりである。さながらトトロの世界に登場するような,木のトンネルに覆われた真っ暗な道。その先に何があるのか全くわからないけれど,入って見たくなる。とりあえず入ってみると,かなりそのトンネルが長かった。その先には蜜柑畑。そうか,愛媛は蜜柑の国である。しかもこの時期,蜜柑の季節である。東京では見たこともないような大きな蜜柑がたくさん。さらに進むと海が見えてきて,道は左に折れ曲がる。帰るには左に行くしかない。帰れるだろう。そんなことを思いながら歩き続ける。しかし,船の最終便の時刻は決まっているし,地図も碌に持っていない。帰れるという保証はどこにもない。ある程度の時刻を迎えたら引き返す,それだけがただ確かな方法である。街灯のない島だから,あたりは暗くなるばかりである。暗闇から時折顔を覗かせる,眼下に広がる睦月の集落の美しさを素直に楽しめないのが辛い。さすがに最終便に間に合わないと野宿になってしまう。それは辛すぎる。我々一同そう自覚したのか,いつのまにか走り出していた。普段は走るだけで疲れてしまうが,こういう時は疲れない。10分ほど走っただろうか,下る方向の道と合流した。これで帰れると思いホッとする。でも街灯はない。

 ゆっくり歩くこと20分くらいだろうか。ようやく睦月の港に戻ってきた。スタンドバイミーのような冒険を,瀬戸内に浮かぶ離島で楽しめた。しばらく話のネタには困らない。

 1808に船はやってくる。三津浜行きの最終便。あっという間の離島滞在であった。離島に行きたい,という気持ちが無限に湧いてくる。夏でもいい,来年の秋でもいい。いつか,行こう。甑島列島とか,五島列島なんかがいいかも。どこでもいいけど。島には島の物語があるはずだから。

 帰りの船は疲れからか居眠りをしていた。1時間ほどで戻ってきた。さて,今度は松山城へ。松山市街地までドライブ。大街道という繁華街なのか商店街なのかわからないところに来たが,駐車場が空いていない。しばらく流して,これだから車はダメなんだとかいってみるけれど,一本曲がった先に駐車スペースを発見。

 松山城へのケーブルカー乗り場にやってきたが,もう営業時間外。夜8時になろうとしている。普通調べるだろうけれど,何故。怒ることもなく,また来ればいいだけ。そういうメッセージとして受け止めれば何でも許せる。

 ここで夜ご飯を食べようか,と探してみるけれど,どこも満席。とりあえずスタバで一服して,東道後のそらともり,という温泉へ向かう。

 東温にあるのだろうか,東温からはおそらく10分くらいのところである。高級感あるスーパー銭湯といったところか。温泉と,レストランと宿泊施設が合わさった清潔感と高級感を具した施設。まずは温泉へ。成田にある温泉によく似ていた。道後温泉よりも効果がある気がする。道後は自己満のための温泉。こういう温泉こそ,本当に心身を慰めるところだと思う。そのあとは岩盤浴へ。死んだ後ってこんな感じなのかな。とか思いつつ今度は冷凍庫のような部屋へ。寒い。そしてレストラン。今日は松山の鯛飯をいただく。宇和島のものはお刺身で,松山のものは釜飯。鯛飯とタコの天ぷら,鯛のお刺身と鰹のタタキ,味噌汁で1200円は安すぎた。ご馳走様でした。

 さて,あとは帰るのみ。帰って,翌日に備えて早めに就寝。充実しすぎた土曜日でした。

 

Day3

 710過ぎに起床。帰る支度を整えて,車に布団を運び入れる。名残惜しいけれど,8時過ぎには出発。松山空港へ。松山空港で荷物を預け,おみやげ屋さんへ。ANA FESTAで10%オフにて購入。ANAカードの元が取れそう。

 来月にまた会えると知っていても,もう少し一緒にいたいと思う。なかなか保安検査を通りたくない。羽田行きがANAJAL共に似たような時間にあるからか,混雑が激しい。915くらいには並んでみた。空港で人と別れるというのは初めての経験。涙がある光景を想像していたけれど,なんて言っても来月また会えるから。寂しさはあるけれど,悲しさはない。もう一人とも空港でお別れ。彼は成田行きに乗っていった。

 さて,今日のフライトはNH584東京行き。Cゲートから出発。JA824A。787ロゴがある貴重なやつ。788に乗るのは初めてだった。だいぶ遅めの搭乗。後ろは確かに短いけれど,ワイドボディ機の落ち着きがある。朝だからか,みんなおやすみモード。僕は一人,この日記を書き進める。離陸を待つ。

 離陸は陸側から。離陸前の高揚感が飛行機で一番楽しい時間。あっという間に松山の景色が眼下に広がる。少し南下して高知,徳島と経由して東京を目指す。昨年旅した徳島,甲浦の上空を飛んだ。どこを飛んでいるのか全然わからなかったが気づいたら大井川,富士山が見えてくる。大島の上空を飛んで,館山の上空で左にカーブ。富浦はここだろうな,小学校の寮はこのへんかなあ,なんて思いつつ,三浦半島,横浜を遠目に眺めつつ,羽田にRWY34Lから着陸。北風の季節に飛行機に乗ったことがないから,これまた初めての経験だった。

 羽田に到着すると,昔々乗ったJA707Aのお出迎え。バゲージクレームののちに京急へ。一本後の快速特急で座って三田まで。三田でまた一本送って最寄りまで。愛媛って近いね。国内ってどこも近いね。お腹すいたね。また,愛媛,いつか行きましょう。

—完—